INTERVIEW
「ピンチは自分を変えるチャンス」
その裏側にある思い
── 座右の銘を教えてください。
「ピンチは自分を変えるチャンス」。よくピンチはチャンスと言われますけど、僕の場合はピンチのときに自分を変えることで結果につながってきた感覚があります。学生の頃もプロでも、順調な時期ばかりではなく、むしろ結果が出ない時期のほうが長かった。そのたびに「このままじゃダメだ」と自分のやり方や環境を変えてきたことで、今の自分があります。
── どのようにボクシングと出会ったのでしょうか。
中学まではサッカーをしていました。でも、うちのサッカー部には有名な不良がいて、理不尽なことでボコボコにされた経験があるんです。そのときに殴り返せなかった自分が悔しくて、「もっと強くなりたい」「変わりたい」という気持ちが芽生えました。そこから環境を変える意味でもボクシングを始めました。本格的にハマったのは高校に入ってからですね。
── 強豪の習志野高校を選ばれた理由は?
千葉でボクシング部がある高校を探して、家から1時間ほどの場所に強豪校があったので受験しました。先輩方が全国大会で活躍していて、その姿がすごくかっこよく見えたんです。凝り性な性格なので、どんどんのめり込んでいきました。
── 高校時代から優秀な戦績を積み重ねてこられました。
高校2年生のときに県大会優勝、関東大会優勝、インターハイ3位と結果が出て、人生が変わるような感覚がありました。サッカー部時代は平凡な選手だったので、「自分にこんな力があったのか」と気づけた瞬間でもあります。
挫折と逆算思考。
二足のわらじが生んだ成長
── 大学では1年生で全日本選手権制覇。順調なようで、挫折もあったと聞きます。
戦績は1年生の頃が一番良くて、その後は勝ちきれない時期もありました。僕はいいときがあると落ちるタイプで、そこからまた這い上がるという繰り返し。まさに、「ピンチは自分を変えるチャンス」なんです。
── 「自分を変える」という意味では、プロ転向後の初黒星をきっかけに商社へ就職されたことは大きな決断だったのではないでしょうか。
そうですね。6戦目で初めて負けて、ジムからは「しばらく試合は組まない」と言われ、半ば引退状態になったんです。「何かを変えないと自分はここで終わる」と思ったんですよ。そんなとき、大学時代の友人に会ったら「社会に出てすごく成長した」という話を聞いて。自分も社会人経験を積むべきだと思い、商社に就職しました。
── フルタイムで仕事しながら、プロボクサーとして戦う生活は大変だったのではないですか。
大変でした(笑)。9時から17時まで働いて、18時にジムに行き、2時間トレーニングして帰る生活。でもそこで「逆算思考」に変わったのが大きかった。「午前中にこれをやる」「夕方までにこれを」「17時に必ず上がる」と時間に区切りをつけるようになってから、仕事の質もボクシングの質も上がりました。
── 逆算思考で仕事を効率的に進めたい人に、アドバイスをするなら?
予定を入れてしまえばいいんです。もし19時からデートの予定が入っていたら絶対に終わらせるじゃないですか。無理そうだったら、何か言い訳を見つけて退出するでしょうし(笑)。そういう意識で、何時までに終わらせなきゃいけないと追い込むことで、時間の使い方やゴールが見えてくるんです。
── その生活が世界タイトルにつながったんですね。
日本チャンピオンになってから世界ランキングに入り、勝ち続ければ2年で世界に挑戦できることがわかったんです。2年後のゴールを決めながらも、そこに行くまでの道程を逆算して、ひとつずつ目標をクリアしていく。それを続けた結果、世界タイトルに辿り着いたと思っています。
── 2015年、初挑戦でWBC世界ライトフライ級王座獲得。心境はいかがでしたか?
相手がすごく強くて、オッズでは僕の勝てる確率は10%以下。それでも勝つことができて、人生がガラッと変わりました。日本王者までは努力すれば誰でも届く可能性がある。でも世界は違う。タイミングや運も絡むし、本当に次元が違うんです。
── 支えてくれる人の存在も大きかったですか。
そうですね。ボクシングはひとりで戦っているように見えて実は全然違う。ファン、ジムの仲間、トレーナー、家族、会社の人たち、取引先の方々……。多くの応援があって成り立っている。日本チャンピオンになって以降は、「応援される人でありたい」という気持ちを強く持つようになりました。
王道と覇道
エネルギー量は同じでも大きな違いがある
── 木村さんの周囲には笑顔の人が多いと伺っています。意識していることはありますか。
たくさんの世界チャンピオンや優秀な経営者の方々を見てきましたが、活躍されている人ほど謙虚で、気持ちがいいコミュニケーションを取られる。そういう人たちと接しているうちに、「自分もそうありたい」と思うようになりました。
── 世の中には、自己顕示欲が強く、それでいてお金をたくさん稼いでいる方もいらっしゃいます。
王道と覇道みたいなものがあって。覇道の世界は足の引っ張り合いや裏切りがある世界だと思うんです。一方、王道の世界は誰かに応援されたり、感謝されたりしている。
どちらもエネルギー量は大きいので、覇道でも稼ぐことはできる。でも、常に不安な気持ちの中で生きていると思うんです。自分はそれよりも、応援されたり、感謝されたりする王道を生きていきたいなと思います。
── 強さと品格は両立できるということですね。
できると思っています。むしろ両立しないと長く続かない。本当の強さは品格があって初めて成り立つものだと思うんです。
装いで意識するのは、
自分の体形に合っているか
── 人前に立つことも多いと思います。装いで意識されていることはありますか。
自分の体型に合った服を着ることを大事にしています。どんなに高価なブランドでも、サイズが合っていなかったらスマートに見えない。昔は奇抜な服も着ていましたが、今は人からどう見えるかも意識しています。
── 鍛えていると、既製品は体型に合わないことが多いと聞きます。
はい。ボクサーのように上半身が発達していると、肩がパツパツで動きづらいことが多いですね。
── キャプテンコアのような、「鍛えた体にフィットする上品なシャツ」には共感しますか。
すごく共感します。実際に着ていますし、動きやすくてフィットするのに、きちんと見える。家で洗えるのもいい。ビジネスの場でも上品に過ごせるのはありがたいですよ。
新しいスタートを切る人を応援したい
── 現在は、株式会社ReStartの代表として、さまざまな事業を手がけていらっしゃいます。
今は大きく5つの軸で活動しています。まずは、講演活動。働きながら世界チャンピオンになった経験などをお話ししています。次に、ボクシングを軸にした解説・執筆活動です。3つ目は、オンラインジムというボクシングのオンラインコミュニティの運営。4つ目は「白米ダイエット」というオンラインダイエット事業。
最近力を入れているのが、経営者向けの健康コミュニティです。経営者こそ健康が資産だと思っているので、専門家を招いたイベントを開いたり、運動や食事の習慣作りをサポートしたり、健康を通じて経営者同士がつながる場をつくっています。
── 今後のビジョンを教えてください。
社名のReStartには、「新しいスタートを切る人を応援したい」という想いを込めています。特にアスリートはセカンドキャリアに悩む方が多い。僕自身の、会社員として商社に入り、その後に起業した経験を通じて、「外の世界にはこんな選択肢があるよ」ということを伝えていきたい。講演でもコミュニティでも、形は問わず、挑戦する人の背中を押す存在でいたいです。
── 本日はありがとうございました。
PROFILE
株式会社ReStart 代表取締役社長
木村 悠
1983年生まれ、千葉県出身。中学からボクシングを始め、習志野高校・法政大学で実績を重ね、大学1年で全日本選手権優勝。卒業後プロデビューし、商社勤務と両立しながら2015年にWBC世界ライトフライ級王者に輝く。2016年に引退後、2020年に株式会社ReStartを設立。講演、解説、執筆、オンラインジム、経営者向け健康コミュニティなど、多方面で“挑戦する人を支える”活動を展開している。
公式HP/SNS:https://restart-sports.com/